「YMTC」大手による独占打破への挑戦

周知の通り、Appleはサプライヤーがそれぞれの分野におけるトップ企業であることを採用条件としている。同社が発表したサプライヤートップ200に、中国企業が98社ランクインし、全体のほぼ半数を占めている。そのうち、大陸企業は42社、台湾企業は46社、香港企業は10社で、「フォックスコン」、「立訊精密」、「藍思科技」、「BOE」などの有名企業の他に、「南平鋁業」、「天馬微電子」、「兆易創新」などのベンチャー企業が含まれていた。

2022年、「長江存儲」(「YMTC」)が開発した128層のNANDはアップルの検証試験をクリアし、近々iPhoneフラッシュメモリーの3社目のサプライヤーとして採用されるだろうと、報じられていた。早ければ5月にも少量出荷を開始し、iPhone14シリーズのサプライヤーチェンに加わることになる。

メモリーチップは、世界のIC市場で最大のシェアを持つカテゴリーで、ほぼ3分の1を占めている。メモリーチップは性能によって揮発性(電気が通っている時のみデータの記録を行うことができる)と不揮発性(電気を切られてもデータを保持できる)に大別され、前者にはSRAMとDRAMがあり、後者にはROM、Flash(NAND型、NOR型)とEEPROMがある。

現在、業界をリードしているのはDRAM(動的ランダムアクセスメモリー、例えばPCのメモリースティック、スマホの作業用メモリー)とNAND Flash(ボディストレージ)の2種類である。DRAMについては、韓国のサムスンとSKハイニックス、米国のマイクロンの3社が世界市場シェアの95%以上を占めている。NAND Flashについては、サムスン、キオクシア(旧東芝メモリー)、ウエスタンデジタル、SKハイニックス、マイクロンなどの大手がそのシェアを占めている。昨年第4四半期には、NAND Flashメーカーの上位6社が世界シェアの96%を占めていた。

NAND Flashが大規模に商用化し始めたのは2010年前後で、比較的遅いスタートであった。換言するならば、投資を増やせば、追いつくことは不可能ではない。「YMTC」はすでに頭角を現しはじめている。簡単に紹介すると、「YMTC」は3D NANDフラッシュメモリーの設計と製造を行うIDMである。2016年7月に設立され、本社は武漢で、武漢・上海・北京などにR&Dセンターを持ち、全世界に広がる従業員は5,000人のエンジニアを含めて8,000人にのぼり、保持する特許は7,000件を超え、そのうち90%は発明による特許である。

その前身は2006年に設立された武漢新芯で、当初は主にDRAM製品を製造していたが、業界全体を襲う暴落を経て、NAND Flashに方向転換した。その後、経営が迷走する時期が続き、経営陣の入れ替えが繰り返され、会社を売却する寸前まで行ったほどである。6年前に「紫光集団」が参入して、他の会社と手を組んで「YMTC」を設立した。

2017年10月、「YMTC」は自主開発と国際協力とにより、32層3D NANDフラッシュメモリの製造をスタートし、これが中国における最初の3D NAND商品となった。2年後、自主開発したXtackingアーキテクチャを採用した第2世代の3D NANDフラッシュメモリを正式に量産開始し、その後64層3D NANDの量産を実現した最初のIDMとなり、これまでの出荷数は3億を超えている。

2020年4月、「YMTC」は業界で一般的な96層をパスして、128層3D NANDフラッシュメモリの開発に成功した。海外メディアのレビューによれば、「YMTC」の128層TLC 3Dフラッシュメモリのストレージ密度は、サムスン、マイクロン、SKハイニックスなどの大手を大きく上回る業界最高レベルの8.48Gb/mm²に達したとのこと。32層から128層へと、通常6年間かかる開発を「YMTC」は僅か3年間で終えることができた。業界アナリストは、「YMTC」がAppleのサプライヤーチェンに加入することができれば、中国のフラッシュメモリー製造技術は国際的に認められることを意味する、と見ている。ただし、現時点ではまだ結論は出ていない。驚くなかれ、BOEのような有力企業ですら、繰り返し製品の品質を改善した後にようやくAppleのOLEDパネルのサプライヤーの一角を占めたのである。

現在、サムスンは200層を越える製品の開発を手掛けはじめ、マイクロンとキオクシアはすでに176層と162層の製品をそれぞれ発売している。技術力にしろ生産能力にしろ、「YMTC」は依然として大手との間に大きな開きがある。いっぽう、自主開発したXtackingアーキテクチャをベースにしているために技術的に独占される心配がないこと、金型サイズが小さく同種の製品では最高密度を実現できていることなど、強みもあり、技術力に関していずれ日本と韓国の大手を越える可能性はある。2020年末現在、「YMTC」が占める世界市場のシェアは1%近くあって、上位6社を除いて最大のシェアを誇る企業となっている。生産能力計画の計算では、2025年に世界市場シェアの6%を占めることになる。果たして、米・日・韓による独占を打破することができるか否かは、先行きが楽しみである。

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