車体の一体成型技術 テスラvs.BYD(注目)

6月に入り市場は消費回復のモードに転じた。自動車業界では、複数の販売拡大の促進措置が打ち出され、今後徐々に回復するとの見方が広がっている。

従業員の職場復帰で生産の再開が進んでいるうえ、有利な政策が立て続けて打ち出されていたことを受け、株価については自動車セクターは上昇トレンドに乗り、ストップ高銘柄が続出。今話題のダイカスト関連株の「広東鴻図」の株価が急騰した。

本来組み立てが必要な複数の部品をダイカスト法を採用することで鋳造・プレス・成形等の工程を一度に完了することが可能となる。他の鋳造法と比較してダイカスト法は車体の軽量化を実現しやすくするだけでなく、製造コストを低く抑えることができ、製造効率が高い。また、サプラインチェーンも、完成車の製造時間と輸送時間を、ともに短縮することができ、大量生産に適している。言い換えれば、ダイカスト法は安くて速い製造法と言える。

テスラ」は疑いなくダイカスト法を車体一体成形の製造に応用するパイオニアである。2年前のテスラ・バッテリー・デーで紹介されたが、車体製造を高効率化するためのバッテリーとボディを一体化する構想(つまり、フロント部アンダーボディーの一体成形+CTC+リア部アンダーボディーの一体成形)が2年経った今、テスラが「L.K.グループ」から調達した大型ダイキャストマシンGiga Pressはすでにカルフォルニア、上海、テキサス、ベルリンにある4つのギガファクトリーに導入されている。イーロン・マスク氏はこの技術への賞賛を惜しまなかった。モデル3のシーリング効果が満足したものではなかったのは、まさにダイカスト法を採用しなかったからだとも語っている。従来の技術で製造される車体は複数の部品単体から構成されるが、メリットと共にデメリットもそれぞれ包含している。いっぽう、ダイカスト法で製造する場合、メンテナンス費用は高くなるがテスラの場合は高効率化を実現している。従来の製造法によるモデル3のリアシャシーは70の部品から構成されるのに対し、一体成形法によりモデルYはわずか2つの部品で済ますことができ、また溶接は700~800個所から50個所まで減少できている。モデルYはアンダーボディーを一体成形することで、従来かかっていた製造時間を1~2時間から3~5分まで短縮している。

現在、世界的な原油価格の高騰下にあって、自動車メーカー間の競争は激化しており、自動車の軽量化(省エネと排出削減)と生産効率の向上が各社の急務となっている。ダイカスト法による自動車製造を実現するには、ダイカストマシンの容量が上がり、金型がより精密で、使用される合金の性能が保証されることが必要条件である。同時に工法も高い水準に達する必要がある。現在、中国国内においてダイカスト製造法に関わる産業チェーンがすでに整えられている。新旧の自動車メーカーはともにこの新しい技術に強い関心を寄せている。

CICCの予測によれば、2025年までに、生産規模の拡大に伴い、材料面では、非熱処理型アルミニウム合金の中国国内の市場規模は88億元、2021年からのCAGRは155%、設備面では、6,000㌧以上のギガプレスが対応する市場規模は47.2億元、2021年からのCAGRは96.0%、製造面では、製造規模は179億元、2021年からのCAGRは156%にそれぞれ達する見込みとのいう。

OEMでダイカストが導入される主な方法は二つある。一つはテスラのように自主開発モデルを採用し、自社工場にダイカスト金型工場も設置する。もう一つはサプライヤモデルで、他社のダイカスト金型工場で製造された部品を自社工場で組み立てる。「NIO」と「文燦」、「華人運通」と「拓普集団」、「小鵬」と「広東鴻図」などが行っている協業がその典型的な例である。

その中でも、「文燦」の場合は車体構成部品の製造に関して先発しているがゆえの優位性を持ち、「旭昇」は長きにわたって新エネルギー車に注力してきている。2021年、「文燦」と2営業日連続してストップ高を記録した「広東鴻図」はともに、自動車用アルミ合金ダイカスト事業による売上高が約40億元に達した。いっぽう、「重慶美利信」は最近3年間における収益と利益のCAGRは20%を超えている。

車体の一体成形が実現した現在、テスラはバッテリパックを直接シャーシに搭載する(CTC, Cell to Chassis)アプローチ方法を模索している。それには、シャシーの中間部分のフロアシートを外し、バッテリーパックの外殻とアンダーボディを一体化させてから、前後に2つの大型ダイカスト部品を接続する必要がある。この製造方法を実現するには、製造チェーンが全体的に極めて高い製造能力を持つことが必要で、完成車メーカーとバッテリーサプライヤーが多分野を跨る高い能力をもつことが要求される。

現在、「CATL」はこの分野の開発を積極的に急いでいる。

偶然であろうが、この頃アフリカのリチウム鉱山の買収や高額な自社株買いを実施した「BYD」も、ダイカスト法を新型車に適用する試みを始めている。5月20日、「BYD」の新車、20万元台のSEALの予約販売が開始された。この車種はクーペスタイルのデザインを持ち、バッテリーパックの外殻とシャーシを一体化するCTC技術を採用している。CTC技術は、セルで構成するバッテリーパックとアンダーボディとを高度に統合することで、車体の剛性度を上げている。CTCとCTB(Cell to Body)が対決する場合、いち早く技術的障害と業界基準を設ける者は勝ち抜くことになるであろう。「華福証券」の林子健研究員が言うように、競争次元がエンジン・トランスミッション、デザイン、シャーシからパワーバッテリー、インテリジェントコックピット、インテリジェントドライビングに変わって、中国の自動車産業が最先端技術に追いつこうと積極的に開発を行っていけば、いよいよ地場メーカーの台頭が期待できるだろう、と。

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