2021年アルミニウム業界の振り返り

電解アルミ、アルミナ、アノードの相場高騰で業界の収益性は改善:

コロナ禍に見舞われた昨年以降、グローバル商品の相場は徐々に回復し2021年に空前の上昇相場を迎えた。国内の電解アルミとアルミナそしてアルミ用電極相場もその追い風を受け、近年まれにみる強い上昇トレンドを形成した。電解アルミの相場は過去15年間での最高値を記録し、10月には24765元/トンに上昇、2006年にそれまでの最高値をつけた24,830元/トンに一歩手前までに迫った。アルミナ価格は、8月までの長い低迷期間を経て、9月、10月に入るや、急速に上昇。10月末には4108元/トンへと13年ぶりの新高値を更新した。アノード価格は17ヶ月間連続で上昇。11月には5570元/トンの新高値を付けた。電解アルミ、アルミナ及びアノードの価格の上げ幅は、年初比の各最高値はそれぞれ60.5%、76.8%、50.9%のアップ。また年間での平均価格の上げ幅はそれぞれ37.3%、19.9%、45.5%であった。

販売価格の上げ幅はコストのアップ幅より大きく、各企業の経営状況は大幅に改善された。 電解アルミ各社の2021年度平均コストは15421元/トン、平均販売価格は18892元/トン、トン当たりの利益は3,471元。2020年比で約2.1倍となった。またアルミナは2021年度平均コストは2497元/トン、平均販売価格が2,799元/トン、利益は312元/トンで2020年比242%の増益。そして国産プリベーク陽極は2021年度平均コストは4276元/トン、平均販売価格は4511元/トン、利益は約235元/トンで2020年比91.8%の増加であった。

循環経済の規画から総合利用への要求が高まり、赤泥処理の問題解決は焦眉の急:

国の内外を問わず、アルミ業界はボーキサイトの残渣である赤泥の大規模にかつ低コストで処理する難題を抱えてきた。近年、赤泥からの鉄分抽出技術、建築材料、路床材料また機能性材料などへの応用技術は大きく進展した。しかしこれらの技術をもってしても消費量は僅少で膨大な赤泥の量に対しては、大海の一滴でしかない。

2021年、中国が発表した「健全なグリーン低炭素循環発展経済体系の加速構築に関する指導意見」では、国家発展改革委員会など委員会連合で発表した「第14次5カ年計画における大口固体廃棄物の総合利用に関する指導意見」と「第14次5カ年計画における循環経済発展計画」で、赤泥の総合利用に新たな目標が設定された。その内容は「2025年までに、固体廃棄物の総合利用率を60%に引き上げ、固体廃棄物のストックを段階的に引き下げる」こととしている。「中華人民共和国環境保護税法」では、赤泥の環境保護税額をトン当たり25元と規定している。また、財務部が発行した「資源総合的に利用した製品と労務付加価値税の優遇リスト」では、「技術標準と関連した条件を満足した場合、赤泥を総合利用する製品の付加価値税の50%を即時徴収・即時還付」と規定している。これにより赤泥の総合利用を政策としてサポートし推進することが示された。

現在、中国では毎年1億トンの赤泥が排出されており、過去から累積されたストック量は10億トンを超える。14・5規画に沿うべく、2025年までに赤泥の総合利用量を6,000万トン以上に持ち上げなければならないが、現在中国での赤泥総合利用率は5%未満(即ち500万トン未満)で、規画で示された目標には、はるかに届かない。赤泥の総合利用は焦眉の急である。

より厳しい政策管理で、アルミナへの投資は抑制:

2021年11月2日、政府は「汚染防止への攻略戦に関する意見」(以下、「意見」という)を発表した。これによると2030年までに気候変動に対し国家自主貢献の目標を実行する。またエネルギー、工業、都市・農村、建設、運輸分野及び鉄鋼、非鉄金属、建築材料、石油化学工などの産業を重点とした炭素排出のピークアウトを進めることが要求されている。「意見」では、エネルギーの高消費と温室ガス高排出のプロジェクトについて無秩序な開発を徹底的に抑制する。重点地域では電気分解アルミとアルミナなどの新規立ち上げを厳禁するとしている。アルミナは初めて規制の対象となった。

広西チワン族自治区工業情報化庁は「広西工業の産業構造調整に関する指導書(2021年本)」を発行した。この中で、「海外のボーキサイトを使用する目的で建設される沿岸部のアルミナ新規プロジェクト」は制限の対象と明示された。また「地域内のボーキサイトを使用する目的の新規のアルミナプロジェクト」も禁止された。

2021年末までに、審査の申請に上がっているアルミナ生産能力は合計で約1,620万トン/年であるが、政府の政策の影響を受け、現状では、実行に移されるのか、まだ審査の結果はもたらされていない。

多種多様な要因で、主要な産業で減産が強いられた:

2021年は「ダブルカーボン」目標(CO2ピークアウト、カーボンニュートラル)が正式に開始される最初の年で、市場心理にも企業活動にも大きな影響を及ぼした。ダブルコントロールがエネルギー消費抑制に直結しアルミの生産は年間を通じて制約された。ダブルコントロール以外の要因としては、自然災害、生産障害、環境査察、原料鉱石の供給タイトなどが重なった。主要な産業では、大規模的な減産が行われ、新規の生産立ち上げと生産の再開のペースも遅れ気味であった。

アルミナについては、2021年後半、河南省での洪水、晋鲁豫での環境保護査察による鉱石供給の遅れとそれに伴う需給のタイト化、広西チワン族自治区での電力制限など様々な要因の影響を受け、多くのアルミナ工場の生産稼働率は下げ続けた。統計によると、2021年で減産量は合計で1,040万トン/年となった。現時点では、減産後まだ回復していないアルミナ生産能力が290万トン/年ある。

2021年、電解アルミの減産規模は380万トン/年に達し、新規プロジェクトでは、2021年前半で雲南省、広西チワン族自治区では少量生産するだけで、他の大部分のプロジェクトは生産停止状態にあった。その結果年間で新規生産能力は僅か45万トン/年足らず。しかし一方では再開された生産能力は123万トン/年で、そのうち60%以上は長時間生産停止を余儀なくされていたが、収益性の回復で再開したものである。2021年12月末現在で、中国電解アルミの生産能力は4,325万トン/年に達し、前年比僅か93万トン/年増であった。新規プロジェクトの中には完成しても稼働していないプロジェクトがあった。

ダブルコントロール下にあることと電力不足という二重の影響を受け、2021年後半期では、中国南部にある一部のアルミ加工企業には減産や停止せざるを得ない企業があった。北部のアルミ加工企業への影響は比較的軽微にすんだ。前年に比べて、企業への電力制限の回数と制限を受ける時間が増えた。例えば、アルミ箔産業を例にすると、十分な受注量がある状況であるにもかかわらず、河南省と南部のある地域のアルミ箔企業で9月、10月の稼働は30%-40%止まり。減産のため市場への供給に大きな影響をもたらした。ダブルゼロ規格の箔や電池箔など需要の強いある製品の加工賃は急騰した。

電気料金の優遇政策が取り消され、石炭価格も高止まり。電解アルミ向けの電力コストは急騰:

中国の電解アルミ産業用の電力ソースは、国営電力からの買電と自家発の2つ。全体に占める割合はそれぞれ40%と60%である。2021年の国営電力と自家発電の電気価格は全国的に上昇し、これに伴い電解アルミ向けの電力コストが上昇した。

2021年8月26日、国家発展改革委員会は「電解アルミニウム産業向けの段階式電気料金政策の改定に関する通知」(以下、「通知」という)を発表した。「通知」の内容は、段階式電気料金政策の実施と電気料金の優遇措置の撤廃で、これは業界に大きな衝撃をおこした。今回の「通知」は「ダブルカーボン」目標とエネルギー消費のダブルコントロールの発表に呼応したものである。各省は迅速に対応し、貴州省、雲南省、四川省、山西省、広西省などでは、電気料金の優遇策を解除する政策を相次いで打ち出し、国家電力価格を大幅に引き上げた。エネルギー多消費企業の電力価格には最大20%の値上げまでという制限は無いと相まって、主要地区での国家電力価格の上げ幅は40%を上回った。

2021年には石炭価格相場もまさにジェットコースターに乗っているように、例えば10月下旬の5,500Kcal品位炭の燃料炭価格は2,570元/トンに上昇し、年内の最低値比で354%のアップ。燃料炭価格の高騰により、自家発電の電気価格も急騰し、10月から11月にかけて、家庭向けの電気価格は0.6元/kWhを上回り、一部の地区では1.0元/kWh以上を上回った(内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区を除く)。10月下旬、国家が石炭市場を規制し始め、石炭価格は急落したがアルミ製錬向けの石炭価格は依然として1,000元/トン前後の中高水準で維持されている。そのため自家発電による電気コストの優位性は徐々に失われつつある。

「泰安科技」の統計によると、2021年12月には、国営電力網の電力の加重平均価格は0.46元/kWhで、2020年末比39.3%のアップ、自家発電の加重平均価格は0.47元/kWhで、2020年末比67.8%アップ。その結果アルミニウム企業の電力コストは著しく上昇した。

エネルギー消費に対するダブルコントロールが強まり、アルミ製錬所が消費するエネルギー効率には大きな改善が求められる:

エネルギー消費のダブルコントロールは「エネルギー消費強度(単位GDP当たりのエネルギー消費量)と総量の双方を改善し制御する制度」で、高エネルギー消費産業への影響は甚大である。2021年5月、生態環境部発表した「エネルギー高消費・高汚染排出建設プロジェクトの生態環境に対する予防管理強化の指導意見」では、「両高」プロジェクトを石炭火力発電、石油化学、化学工業、鉄鋼、非鉄金属製錬、建築材料の6産業に分別する。電解アルミは非鉄金属産業でのエネルギー多消費と汚染多排出の代表として、エネルギー消費のダブルコントロールの強い監督下にあり、これも昨年の電解アルミの大規模減産の要因となった。

エネルギー多消費産業へのエネルギー効率の要求は大きくなっている。2021年11月、5部門は共同で「エネルギー多消費産業の主要分野におけるエネルギー効率の目標レベルと基準レベル」を発表し、電解アルミのアルミ溶湯の交流電力消費量のベンチマークレベルは13,000kWh/トン、基準レベルは13,350kWh/トンと決定した。「泰安科技」の調査研究によると、現在ベンチマークレベルに合格している生産量は全体の20%にとどまっている。つまり、今後同業界では省エネ・省炭素の技術変革を進め生産活動時のエネルギー効率を向上させるなどの投資を増やさなければならない。電解アルミニウム企業のエネルギー使用環境もますます厳しさを増していく。ダブルカーボンの目標とエネルギー消費双控を背景に、生産制限とコストアップの二重苦が重くのしかかるのである。

「アルミ再生合金の原料となる格落ちのスクラップ」の規格が発表される。これによりアルミスクラップの輸入に道が開かれた:

2021年8月20日、「格落ちのアルミ再生合金の原料」(GB/T 40382-2021)と「高品位アルミ再生原料」(GB/T 40386-2021)という2つの標準が発表され、2022年3月1日から正式に実施に移される。この標準設定で、再生アルミ原料の標準システムが充実する。アルミスクラップの輸入などにスペック根拠を提供することで国内の再生アルミ産業への原料の品質を保証することや再生アルミのリサイクルレベルを向上させることに強力な促進力を付与する。

2021年1~11月までの、中国のアルミスクラップ輸入量は87万4,000トンとなり、前年同期比18.0%増。その要因は コロナ禍が緩和した後の反動の他に、「再生鋳造アルミ合金原料」の標準化が施行されたことが大きい。当該基準は2020年7月1日に通知され、同年11月1日から施行された。実情に合わせて修正・調整が行われている。輸入企業と関連部門のいわゆる慣れに従って、アルミスクラップの輸入品質と数量は着実に増加していった。

現時点では、輸入スクラップは高品質(高いアルミ有効成分、溶解ロスが低い、介在物量が少ない、揮発物量が低い)を保っており通常の溶解炉に直接投入して溶解されている。しかしスクラップの種類によってはその使用方法に差が生じる。「鋳造工程を経たアルミ合金原料」は成分を同じくする鋳造アルミ合金向けのみに適用され、「格落ちのリサイクルアルミ合金原料」は主にアルミ加工業に使用されるとともに、成分に混じり成分が少ないアルミであるがために、以上の全ての用途に利用される。以上の3ツの標準は相互に補完し合い、未来中国の高品質なアルミスクラップの輸入ルートをよりスムーズにし、輸入アルミスクラップの品質と数量を大幅に改善する。また「ダブルカーボン」を背景に、国内のアルミリサイクル産業の健全な発展を促進するだろう。必要とする原料需要を満たす一助ともなっていくであろう。

エンドユーザーの「ダブルカーボン」目標達成、高品質再生アルミニウムの使用で:

中国では、「ダブルカーボン」目標のもと、新エネルギー自動車や太陽光発電の分野で新たな技術開発が期待されている。アルミニウムは二酸化炭素排出量の削減とカーボンニュートラルの達成に総合的に優れた金属材料として、エンドユーザー分野で重要な役割を果たしている。統計によると、2021年には中国で20件のプロジェクトが提案され、そのうち6件が近く開始される。8件のプロジェクトは近く完了し本格生産に入るという。太陽光発電や自動車軽量化用アルミニウムに関連するアルミニウムの加工プロジェクトも順序に推し進められている。例えば「西南鋁業」での生産量10万トン/年の自動車軽量化用生産ラインや「南山鋁業」の生産量2万1,000トン/年のパワーバッテリー用アルミ箔プロジェクトでともに生産に入っている。その他の例としては、「ノベリス」の自動車用軽量化用アルミ板・ストリップ、「江蘇常鋁」の生産量3万トン/年のパワーバッテリー向けアルミ箔プロジェクト、「東陽光」の生産量20万トン/年の低炭素バッテリー用アルミ箔プロジェクト、「鑫鉑股份」の生産量10万トン/年の太陽光発電用アルミ架台プロジェクト、「永臻科技」の生産量36万トン/年の再生アルミを利用することで低炭素排出化を狙った太陽光発電発電機の枠プロジェクトなどがあげられる。

このような日々拡大している新しい技術を要するマーケットに応えるべく、中国のアルミニウム加工産業は太陽光発電枠、リチウム電池陽極集電体向けアルミニウム箔、新エネルギー自動車用電池シェル、新エネルギー自動車用電池トレイなど中高級アルミニウム製品を積極的に開発・生産し、エンドユーザー分野での「ダブルカーボン」目標の実現に向かっている。

「中央・地方政府、産業界、企業の4者」の協力を得て国際貿易摩擦の解消に良い結果をもたらした:

貿易摩擦問題でいつもやり玉にあがるのはアルミニウムである。2021年の末まで、中国のアルミニウム製品および関連製品に対して調査・執行中の貿易救済案件は20か国以上、50件あまりと多い。それだけに案件に関わる製品の関連産業や川上・川下の産業に大きな影響を及ぼす。

有効な対応システムを確立することで、貿易摩擦に適切に対応し、国際間の議論に立ち向かうことができる。そしてこのことが良好な海外取引の土台を形成するのである。2021年、「4体連動」すなわち国家と地方政府、産業界、企業の協働により、中国製アルミ箔に対するタイ国のセーフガード案件では措置なしで終結し、コロンビアの中国製アルミ押出材に対するアンチダンピング再審では、アンチダンピング関税の停止で決着するなど、国際貿易救済案件への対応は顕著な結果を得た。現在のように複雑で不安定な貿易環境下にあって、これら案件の好結果は、貿易摩擦に対応していく国内アルミニウム産業および関連企業に大きな自信と決意をもたらした。

「2030年、炭素排出ピークアウト」発表。産業界を牽引:

2021年10月24日、国務院は「2030年までにカーボンピークを達成するための行動計画」を発表した。それによると、非鉄産業に対してはカーボンピークスの実現に向け次の4つの取り組みを提示している。①電解アルミの新規生産能力拡大への規制を厳格化すること。②エネルギー使用構造の最適化。③リサイクル産業の発展促進。④省エネ技術によるカーボン削減の堅持である。第一は電解アルミの過剰生産能力解消と生産能力の統合を厳格に進め、生産能力増大への規制を厳格する。第二は、グリーンエネルギーへの置換を推進し、水力発電、風力発電、太陽光発電などの比率を高める。第三は、非鉄リサイクル産業の発展を加速させ、今まで廃棄していた資源をリサイクルしたり廃棄物を選別することでリサイクルされる廃棄物による生産量を増加させる。第四は、グリーン・低炭素技術を高め、生産プロセスで発生する廃熱の回収レベルを高め、製品にかかるエネルギー消費量の削減を推進する。

中国の工業界において、非鉄金属分野は炭素排出削減への成功のカギを握る産業である。「泰安科技」の推計によると、2020年において、中国の非鉄金属産業の二酸化炭素排出総量は約7億トンだという。そのうち、アルミニウム産業の排出量は約5億6千万トンで、非鉄金属産業の総排出量の80%を占めている。またそのうち、製錬プロセス(電解アルミニウム、アルミナ、再生アルミニウム)における炭素排出量は約5億3千万トンであるという。アルミニウム産業、中でもアルミニウム製錬産業は、中国の非鉄金属産業が炭素排出のピークアウトの目標を達成するに肝要な領域で、エコ低炭素への挑戦にまさに直面しているのである。

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