EUの炭素関税 中国アルミ産業に与える影響(注目)

EUが検討している炭素国境調整メカニズム(以下、炭素関税と呼ぶ)は計画では2023年の履行で、実際の徴収は2026年からを予定されている。EUの炭素関税の賦課は、中国の国際競争に新たな課題を投げかけている。

1.中国からEUへ輸出されるアルミ製品には次の特徴がみられる:

第1に、輸出品されるのは主にアルミ材と製品であること。

電解アルミはほとんど輸出されていない。精製アルミ、高純度アルミ、アルミ合金をが少量輸出されているだけである。2021年には、精製アルミと高純度アルミ100トン、アルミ合金360トン、アルミ38万トン、アルミ製品56万トンが輸出されている。

第2に、EUは、中国のアルミ材および製品の最大の輸出市場である。

2021年には、中国は合計94万トンのアルミ材と製品をEUに輸出し、世界への総輸出量829万トンの11.3%を占めることになる。その中で、ヨーロッパへのアルミ材の輸出は6.9%を占め、アルミ製品の輸出は19.8%を占めている。

第3に、EUへのアルミ製品の輸出は増加しているが減少傾向が明確。

今世紀に入って以降、中国のアルミ製品のEUへの輸出の成長率は平均19.1%/年であり、2021年の増加幅は31.5%に達した。しかしEUとの貿易摩擦の影響を受けて、中国のアルミ帯、ホイル、形材などは2019年以降輸出量は年々減少した。実数を示すと、19年度は58万トン、45万トン、38万トン。減少傾向が明確にわかる。対前年比で20年、21年はそれぞれ21.7%と17.6%の下落幅であった。

2.EUの炭素関税の範囲について:

EUの炭素関税課税対象製品にアルミ、セメント、鉄鋼、電気、肥料のほか5つのカテゴリーの製品が予定されている。現状では、未加工のアルミとアルミ材が対象に含まれるが、アルミ製品は含まれていない。2021年、中国は合計382,000トンの未加工アルミおよびアルミ材をEUに輸出し、その金額は15.3億米ドルになる。EUの輸入元から見ると、アルミプロファイルアルミ圧延製品は主に中国から輸入されており、4分の1以上を占めている。2021年、中国は70,000トンのアルミプロファイル、170,000トンのアルミシートと帯、および12万トンのアルミホイルがEUに輸出された。

3.中国のアルミニウム輸出に対する炭素関税の影響と課題:

EUの炭素関税草案によると、長期的には、炭素関税とその波及効果は、アルミ製品の輸入障壁となり、世界の貿易のあり方にも影響を与えると考えている。しかし、短期的には、中国のアルミ輸出への影響は比較的限定的と思われる。一方コロナの流行、ヨーロッパのエネルギー危機、及びロシアとウクライナの戦争などの一連の出来事が重なる状況下にあってヨーロッパの炭素価格は下落しており、またEUの炭素関税策は日程に遅れが生じると予想される。中国のアルミ輸出に対する炭素関税の影響と課題は次のとおり:

第1に、輸出コストの増大で、価格の優位性に影響が与えられる。

中国が2021年に382,000トンの未加工アルミやアルミ材をEUに輸出する場合、アルミ1トンあたり0.7トンの二酸化炭素排出量、および二酸化炭素1トンあたり80ドルの炭素税と仮定すると、課税額は毎年2,000万ドル以上(無料排出権は差し引かれない)と予想される。二酸化炭素換算で見積もると、年間の炭素税は3億ドルを超える。増分の炭素関税は、中国の輸出企業とヨーロッパの輸入企業が負担される可能性が最も高い。さらに、中国の輸出業者とヨーロッパの輸入業者は共にカーボンフットプリントレポートを提出する必要があり、企業の炭素排出管理、データ監視、定期的な会計監査などの関連費用も増加する。

第2に、現状の中国のエネルギー源を考慮するなら、画期的な技術がない限り短期的には、アルミ材のライフサイクル全体で炭素排出量を削減する余地は限られる。長期的には、エネルギー創出方法の進化で、クリーンなエネルギー消費の割合が大幅に増加し、低炭素排出が加速され、中国への炭素関税の影響は徐々に削減されていくと予想される。

第3に、炭素排出関税は、強力な「貿易兵器」になる可能性がある。欧米は共同で「炭素クラブ」の設立をすすめ、英国や日本など参加国数を増やし、「高炭素」製品の参入障壁を設定する計画である。EUはまた、この地域の輸出業者に輸出税還付を認める可能性があり、炭素排出量が少ない競合相手と比較して、これまで持っていた中国輸出業者の優位性は弱まっている。

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