ダブルカーボン政策で、アルミ産業に新たな変革を(注目)

アルミの製錬には大量の電力が消費されるが、その85%を火力発電水力発電に依存している。アジア・オセアニア・アフリカでは火力発電が、欧州・南米は水力発電が主流である。その他の地域をみると、アイスランドは地熱、フランスは原子力、中東は天然ガスがそれぞれ主流である。

2019年の全世界の電解アルミの生産量は6,433万㌧。二酸化炭素排出量は10.52億㌧と推定されている。2005年~2019年の期間、世界のアルミ製錬による二酸化炭素排出量は5.55億㌧から10.52億㌧に増加し、その率は89.55%、CAGR(年平均成長率)は4.36%にのぼった。

1.ダブルカーボン政策のアルミ産業に及ぼす影響:

2019年~2020年の期間でアルミ製錬向けの電気消費量は全国の6%以上を占めていたと推定されている。Baiinfoによると、2019年中国のアルミ製錬の86%は火力発電による。Antaikeによると、2019年のアルミ製錬で排出された二酸化炭素は4.12億㌧で、同年の国内総排出量の約4%を占め、他の金属や非金属材料を遥かに凌駕している。

製錬向けで二酸化炭素大量排出の主因は火力自家発電にある。アルミを電解製錬する際の電力源は火力発電と水力発電の2種類がある。アルミニウム1㌧を電気製錬する際の二酸化炭素排出量は、火力発電の場合は11.2億㌧、水力発電の場合はほぼゼロである。

中国のアルミ製錬に使用される電力源は、自給電力系統電力とに分かれる。2019年末の中国における製錬工場の電力自給率は65%で、ほぼすべて火力発電による。そのうち系統電力の占める割合は約35%で、内訳は火力発電は21%、クリーンエネルギーは14%を占めている。

Antaikeは、第14次五箇年計画において省エネと排出削減が推進され、今後アルミ製錬業のエネルギー構造は必ず転換されていくだろうと予測している。特に現在企画中のアルミ製錬でのクリーンエネルギーの比重が2019年の14%から24%へと大きく増すことが予想されている。中国のエネルギー構造が全体的に改善されて行き、製錬業のエネルギー構造は更に最適化されていくことだろう。

2.火力発電の依存度減少へ:

中国がカーボンニュートラルを目指すと宣言した以降、火力発電への依存度に減少傾向が見られる。炭素排出料が課金されるなど厳しい規制が施されており、自家発電のメリットが薄まっていく方向にある。高コストという圧力の下で、新規のアルミ電解製錬プロジェクトのほとんどは、南西部の豊富な水資源を利用した水力発電のできる地域に集中している。今後火力発電の利用は徐々に減少していくであろう。

3.水力発電のメリットはますます顕著に:

水力発電は中国で最も低コストの非化石エネルギーだ。2020年、中国の水力発電の設備容量は3.7億KWに達し、各種発電設備の総容量の16.8%を占め、石炭に次ぐ従来型エネルギー資源となった。しかし、水力資源の開発には限界のあることがこのほど分かった。全国で開発が可能な水力発電の容量は7億KW未満で、水資源の利用が限定的であることがこのほど中国発電水力調査で明らかにされたのだ。

中国では現在、小規模な水力発電所は閉鎖され、新規で大規模なプロジェクトは困難になっているのが現状である。従って、既存の水力発電によるアルミ電解製錬事業はコスト面において大きな競争力を持っていると言える。2022年末までに小規模水力発電所7,000カ所以上が閉鎖される計画である。一方大規模な水力発電所の建設には住民の移転問題が絡み、建設期間が長期にわたることが懸念される。

4.今後の主流は再生アルミに:

アルミニウムの生産はボーキサイトの採掘、アルミナ精製、陽極調製、電気分解、インゴット製造と5つの工程が含まれ、それぞれエネルギー消費量の占める割合は1%、21%、2%、74%、2%となっている。再生アルミニウムの製造には前処理・製錬・輸送の3段階があり、それぞれエネルギー消費量の占める割合は56%、24%、20%となっている。

再生アルミの使途は今後、合金地金の純度と機械特性および鋳造技術の向上で、建築・通信・電子・包装・自動車などへと利用分野が広がっていくだろう。

再生アルミ業界はリサイクル産業と循環型経済のカテゴリーに属しているが、国の奨励産業リストに加えられたことで、企業は新規事業を開始するに際しての政府の許認可、融資および土地利用などに係る審査に、政府からの支援策を受けることができる。同時に、政府は再生アルミ産業の発展のために、低水準企業の閉鎖・淘汰を図るとともに市場環境の改善など一連の支援策を打ち出している。

参考:

3060ダブルカーボン:2020年から始められた中国の脱炭素政策、「双炭」とも呼ばれる。

①2030年までにCO2排出量を減少に転じさせる(Carbon Peakout)。

②2060年までにCO2排出量をゼロにする(Carbon Control)。

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