2022年の中国アルミニウム業界を占う

昨年中国のアルミニウム産業は順調な発展を遂げ、生産量と利益はともに20年比で大幅なアップを実現した。国家統計局によると、21年中国のアルミナ、電解アルミ、アルミ材の生産量はそれぞれ7,748万トン、3,850万トン、6,105万トンで、20年比略5%から7%のアップとなった。21年を通して電解アルミの価格は高値圏で推移した。揚子江現物市場の一次アルミ年間の平均価格は18,904元/トンで前年同期比33.5%アップであった。2021年のボーキサイトとアルミナの輸入量はそれぞれ10,737万トンと333万トンで、前年比3.8%減と12.6%減だった。アルミスクラップの輸入量は103万トンで、前年比24.9%増。未加工アルミの輸入量は273万トンで、前年比19%増。アルミ材の輸出量は546万トンで、前年比17.9の増。22年の各国はコロナ禍による経済の後退から回復を急ぐため財政出動など施策を打つものと思われる。そのような環境の中、今年の中国のアルミ産業を取り巻く環境を次のように予想する。

1、中国のボーキサイト資源では十分な国内供給ができないことが明確に認識されている。自然資源部が2021年に発表した国勢調査結果によると、20年時点で確認されている中国のボーキサイト資源の埋蔵量はわずか5億8千万トンにすぎない。これは、中国のアルミ産業が安定して発展していくためには十分な量ではない。そこで低品位のボーキサイトであっても使用に耐えられる技術の開発が急務となっている。

2、ボーキサイトの輸入依存度は更に高まる。2021年のボーキサイト輸入量はすでに1億トンを超えたが、2022年には更に増え、同時に購買コストと輸送コストも増加していくと予想する。

3、アルミナの生産量増に伴い、副産物である赤泥の生産量も増加し、生態環境の汚染リスクが高まっている。ボーキサイトの年間輸入量が1億トンの場合、そのうちの約6000万トン以上の赤泥が同時に輸入される計算となる。大量の赤泥に対する管理体制の強化が必要とされる。

4、電解アルミの生産能力と生産量は引き続き増加する。2022年生産量は4000万トンの大台を突破すると予想する。

5、アルミ加工産業は成長する。2022年、アルミ産業は従来からの不動産や自動車等産業の需要を満たすほか、インフラ・航空・宇宙航空・軍事・新機械製造・最新家電・新エネルギー等先進分野においても需要が増えるだろう。また、高電圧電子コンデンサ用アルミ箔や特殊アルミの合金材料の分野においても市場の拡大が期待される。

6、再生アルミ産業は急成長の段階に入る。2022年再生アルミ産業は品質アップにより高級製品およびハイエンド製品向けの需要が拡大するだろう。中国の再生アルミ産業は生産能力に見合ったアルミスクラップの供給不足という矛盾に直面するだろう。

7、脱炭素と二重制限策の達成のため、アルミ業界はエネルギー源の転換に対応していく必要がある。①太陽光発電やエネルギーの貯蔵技術など新エネ・新技術のアルミ産業での利用が進んでいくだろう。②二酸化炭素の吸収と再利用の研究が進み、工業化されていくだろう。

8、アルミニウム産業の川上と川下企業間の連携を深化させていく。一層の緊密で円滑な関係が構築されていくことが期待できる。

9、アルミニウム産業には大きな事故が起きるリスクが潜んでおり、安定した操業が楽観できない状況にある。①アルミナの精製過程で発生する赤泥の蓄積量が10億トンを超えた。②電解アルミ産業は超大電流(現在は最大660 kA)・直列回路超高電圧(最大1600 V)・強磁場・高温・高労働強度のため、作業環境の改善が必要である。③新規事業の計画に関する審査は形式に流れる傾向が強く事故のリスクが潜んでいる。④整流器の爆発、電解槽のショートによる爆発、電解槽の溶湯漏れによる爆発などの事故が昨今度々発生し、多大な経済損失をもたらしている。操業の安全性が軽視され、事故処理の四原則がないがしろにされていることが原因である。⑤アルミ需要が拡大し、建設を急いだころに立ち上がった生産ラインは稼働期間がすでに5年間を超えており設備と部品の老朽化などのリスクが顕在化しつつある。

10、アルミ産業における人材不足が際立っている。①高度人材の育成が重視されていない。現在、伝統ある大学の多くはアルミニウム業界向けの専門人材の育成に熱心さを欠いているようだ。②専門技術者の高齢化問題。③アルミ産業の採用問題。労働者の募集に苦労しておりまた転職が多いという問題がある。④企業は高度な知識を持つ技術者の不足に直面しているが専門性の高い人材の自前の育成を重要視していない。

11、アル産業はAI・デジタル化・スマート製造・IoTなどの新技術を積極的に取り入れている。中でもアルミ加工業はボーキサイト、アルミナ、電解アルミ、再生アルミ、アルミ用炭素などの原材料系の業界以上に新技術の採用に先行している。

12、2022年の中国では一次アルミの需供バランスは均衡が保たれるであろう。世界の金融市場はコロナ危機からの経済回復などで多くの施策がとられる。電解アルミの価格は高値圏を見込む。

13、アルミ製錬の原材料と補助材料の価格に上昇の傾向が見られる。要因は次の通りである。①米国のインフレが進行し、FRBは金利の引き上げに移行する。コモディティと原材料・補助材料の価格が上昇する。②コロナが収まれば各国は経済の立て直しを急ぐが回復するには時間がかかるため、供給不足が発生して価格は押し上げられることになる。③中国は世界最大のアルミ生産国と消費国であるが2022年のアルミ消費量はさらに増加すると予想される。④長引くコロナの影響で、各産業に程度の差こそあれ材料(生活用品や工業用品など)不足に見舞われる。

14、アルミナ・電解アルミ・アルミ製錬用炭素等産業は省エネ・排出削減および環境保護の面でより大きな改善の余地を残しており、各企業は更に成果を上げていくことだろう。

15、アルミ産業のマーケティングモデルは更に進化する。①産業チェーンで川上と川下の連携が高まり、生産コストと輸送コストを削減していく。②従来の生産-消費モードから消費-生産モードへと進化する。③ビッグデータとIoTの応用と普及。④盤石な国内市場を梃に、国際市場の開拓が進む。

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