中国のコロナ禍 アルミ産業への影響(注目)

コロナがアルミ産業のコスト、価格、需給、貿易など様々な分野に影響を及ぼしている。「安泰科」によると、このコロナで生産量はアルミナで345万トン/年、電解アルミは40万トン/年減少した。現在、減少した生産能力は徐々に回復してきている。しかし一方、アルミの消費については自動車産業が減産を余儀なくされているなど大きな問題に直面している。また物品の輸送効率が著しく低下し、その結果輸送コストが増加している。コロナを起源とするいくつかの要因で、プリべーク陽極の価格は高騰、アルミナ価格の底打ち、アルミ価格の上昇と下落の不安定な繰り返しが見られる。アルミ関連の各分野の状況は次のとおりである。

1.プリベーク陽極

今年に入り、国内プリベーク陽極の価格は、暖房シーズン中の環境保護規制、原料供給の逼迫とコロナによる輸送トラブルの影響を受けて上昇を続けている。5月の陽極平均価格は7500元/トンに上昇し、過去最高を記録した。前月比663元/トンで年始より2487元/トン上昇し、上昇幅は最大の50%に達した。

生産面では、炭素産業の川上と川下は東北と華東地域に集中しているがコロナの影響で、原材料の供給不足と完成品の輸送が滞り、入金サイトが延長され、企業の生産意欲を低下させている。データによると、第1四半期の国内陽極生産量は487万トンで、前回、前年同期比それぞれ7.7%、5.5%の減少であった。華東、華中地域の生産は、主に冬季オリンピック中と暖房シーズンの間規制を受ける。更に、3月には、各地がコロナに見舞われた。中心都市およびその周辺地域でのロックダウンによりサプライチェーンが遮断された。特に、原料石油コークスの輸送は一次停滞し、人の動きもなく、企業の稼働率にも一定の影響が及んだ。

コスト面では、2022年以降、プリベーク陽極の生産コストが大幅に上昇した。コスト上昇の主な要因は、原料価格の上昇によるもので、石油コークスコストが陽極製造コスト全体の71%を占めている。

年初、産油国の政治的な対立から原油価格が史上最高値を更新し、国際原油価格は一時、2008年以来の高値となる一時139ドルまで上昇した。現在の国内精製原油の価格メカニズムは、「フロアプライス」と「シーリングプライス」からなっている。国際価格が40ドルから130ドルの間であれば、価格調整機構は正常に働くが、この範囲を超えると国内の石油価格は調整されない。そのため、現在の原油高は製油所に大きなプレッシャーを与え、生産意欲を低下させ、このことが石油コークスの供給減、価格上昇の引き金となったのである。

同時に、コロナが輸送日数の延長とコストアップを招いた。今年に入ってから、国産石油コークスの価格上昇により、炭素企業の輸入石油コークスの需要も増加したが、港のコンテナ不足、深刻な船積みの遅れ、港の混雑化。さらに、ロックダウンからトラック運転手の人手不足により、輸入石油コークスの陸上物流に難題が突き付けられている。輸送の不調は、全体的な輸送コストの上昇と効率の低下につながる。3月に山東省でコロナが発生し山東地域から天津港へ輸送される貨物の運賃は30%~50%上昇、一時深刻な事態となった。現在、運賃は徐々に安定してきているが、4月の平均輸送コストは年初に比べ、まだ20%程度高い。

2.アルミナ

年初以降、国内アルミナ価格は全体的に"N"字型の傾向を示す。4月末、国内アルミナスポット価格は3019元/トン、年初に比べて215元/トンを上昇し、上昇幅は7.6%となっている。

コロナ禍でアルミナ企業への影響は主に2つの段階がみられる。第1段階は1月下旬から3月中旬までで河南、広西、貴州などの地域に見られる。「安泰科」の統計によると、第1四半期のアルミナ生産量は1780万トン、前年同期比4.5%の減少となった。コロナによる減産に加え、北京冬季オリンピック時の生産制限も第1四半期の生産量減少の一因となった。第2段階は4月中上旬にかけて、山西省、山東省にコロナが発生して以降。その影響は主に陸上輸送の深刻なトラブルにより、鉄道輸送に切り替えざるを得ず、出荷に停滞や遅延が発生した。

コスト面では、原料価格の上昇により、中国のアルミナコストは上昇を続けている。「安泰科」によると、2022年3月の中国におけるアルミナの加重平均フルコスト(税込み)は2,793元/トンで、前年比122元/トン(4.6%)の増加となった。

3.電解アルミニウム

今年に入り国内外のアルミ価格は逆“V”字型傾向を示し、海外での供給不安やコスト上昇などで3月上旬に年内の高値24255元/トン(4073.5ドル/トン)を付けた後、米連邦準備理事会(FRB)の利上げの他、中国でのコロナによる国内経済への圧力が増加し、需要量の減少が要因で下落した。

全体として、コロナ禍にあってもアルミ生産への影響は比較的限定的で、2月だけで広西省は40万トン/年の生産能力が停止し、他の地域での減産や停止はなかった。そのため、今年に入って以降電解アルミニウムの生産量に急速な回復が見られる。「安泰科」のデータによると、4月末までの中国の電解アルミニウム生産能力は4341万トン/年、稼働生産能力は4031万トン/年で、2021年末に比べ261万トン/年増加した。生産回復の主な理由は2つある。1つは電力供給の規制が徐々に緩和されること。もう一つは経済の下押し圧力が大きく、これを安定させるために、地方政府は生産活動の再開を強く要求しているからである

アルミ地金の在庫は3月中旬に減少し始めたが、入庫はスムーズに進まず、2週間減少した後、ほぼ3週間連続で増加し、4月中旬から下旬にかけて再び徐々に減少し、ゴールデンウイーク連休後に再び急増した。「安泰科」のデータには、4月の中国の一次アルミ消費量は344.2万トンで、前年同月比5.5%減少し、2020年3月以来最大の月間減少幅を予想している。

一方、市場の異常な動きはコロナが大きく関連している。今年に入り例えばいくつかの主要な自動車生産拠点が深刻な影響を受けている、上汽、テスラ、蔚来などの企業またはそのサプライヤーは感染区にあったため、供給中断などの問題で続々と生産を停止している。4月には多くの自動車生産企業や関連メーカーが休業に追い込まれ、4月〜5月のアルミ需要は深刻な影響を受けた。現在、上海市は積極的に生産の再開を推進し、トップ企業を牽引役とし、産業チェーン全体の回復を牽引している。重点企業の生産再開を支援するため、「ホワイトリスト」制度が設けられ、第一陣666社、第二陣1188社がリストアップされた。

4.アルミ加工

「安泰科」によると2022年第1四半期の国内アルミ生産量は約1074万トンで、前年同期比5.6%の増加を予想している。製品ごとの生産状況はアルミストリップの生産量は330万トンで前年同期比8.6%増加、アルミ箔の生産量は109万トンで前年同期比4.8%増加、アルミ押出材の生産量は520万トンで前年同期比3.8%増加となった。

消費分野から見ると、不動産業界からの全体的な需要は低迷しており、建築用アルミドアと窓の生産は影響を受けているが、工業用プロファイル市場は建築材料市場よりも好調だ。新エネルギー車と太陽光発電産業は、一般的にアルミ板、バッテリー箔、バッテリーソフトパッケージ、バッテリートレイとバッテリーケース、太陽光エネルギー関係などが上昇しており、投資プロジェクトの数も増えている。

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