アルミ価格 予想と現状の狭間

端午の節句を過ぎたころ、上海市場のアルミ契約価格は一時21220ポイントまで上昇を見たが、その後すぐに反落、21000ポイント近辺までに下落した。アルミ相場は強い上昇期待と低迷している現状の狭間にあえいでいる。

1.マクロ景気、回復と市場への強い期待：

国家統計局の最新データによると、5月の中国製造業購買担当者景況感指数（PMI）は49.6％で、50％のボーダーラインを下回ったものの、前月より2.2ポイント上昇した。このことは、製造業の景況感がわずかながら改善したことを示したものである。PMIを構成する5つの指数はいずれもボーダーラインの50％を下回った。このうち生産高指数は前月比5.3ポイント増の49.7％で、生産が改善したことを示すものである。新規受注指数は前月比5.6ポイント増の48.2％で、需要の下落幅が縮小したことを示した。原材料在庫指数は前月比1.4ポイント増の47.9％で、主要原材料の在庫減少幅が縮小したことを示した。雇用指数は前月比2.2ポイント増の47.6％で、製造業の雇用状況が少し回復したことを示した。供給業者納期指数は前月比6.9ポイント増の44.1％で、依然としてボーダーラインを下回っており、納期遅れが改善されていないことを示した。また、財新(経済誌)が発表する中国製造業購買担当者景況感指数（PMI）は 前月比2.1ポイント 増の48.1％であった。これらの上昇トレンドは国家統計局が発表した製造業購買担当者景況感指数の推移と一致している。

政策面では、5月以降、政府は雇用と物流を確保するために、支援のための政策を打ち出すとしている。産業チェーンと供給チェーンの問題を解決し、業務サイクルが順調に回り始めることが企業経営の安定と雇用の確保に寄付する。６月以降、上海の生産・生活環境が徐々に正常化するにつれて、景気回復を確たるものにするという期待が高まっている。

2.直近の景気、アルミ業界は軟化：

アルミ業界の川下に位置する企業の稼働状況はSMMの統計によると、主要企業の稼働率は前週より4.6ポイント増の66.3％で、昨年同期の75.7％の水準を大きく下回り、また新型コロナウィルのパンデミック前の最高値69.9％までには回復していない。製品別に見ると、アルミ型材が前年同期より16ポイント減少、業界水準を下回った。アルミ板、アルミ帯、アルミ箔、リサイクル合金はそれぞれ前年同期より8ポイント、9ポイント、10ポイントの減少となった。

在庫をSMM統計に見ると、6月6日までの国内電解アルミの在庫は87万4千トンで、今年のピーク時の在庫より27万トン減、5月の始めより15万9千トン減、前週より4万9千トン減となった。しかし、最近の在庫減少の要因は倉庫質権事件の影響を受けて貿易業者などが同じ時期に倉庫から貨物を引き取ったものである。電解アルミの出庫量は週間の18万8千トンに増加し、今年の週間出荷量の最高値を更新した。また、一部地域の倉庫は在庫の棚卸時期にあたり入庫と出庫を一時停止していた。統計データによると、在庫量はほぼ横這である。これによってエンドユーザにデリバリーされた数量は大きなものではないと思われる。

したがって、アルミニウム価格にとって、現在の市場の要因は依然として需要の回復が待たれるのであって、供給が増加すると予想される中で需要の回復が予想を下回れば、アルミ相場は軟化するであろう。

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