除却済み太陽光発電モジュールをリサイクルに

エネルギーの安定確保は国民経済の生命線である。中国のエネルギー源は現状では石油と石炭に過多に依存しているが、「カーボンピーキングとカーボンニュートラル」の目標のもとエネルギー源に何を選択するかは国家戦略として重要な選択である。風力発電、太陽光発電その他の新エネルギーを開発し普及させていくことは中国経済が持続可能な発展を実現する手段として重要な位置づけがなされている。すでに、中国は世界最大の太陽光発電モジュールの生産国であり世界最大の太陽光発電国である。国際再生エネルギー機構によると、2025年から、中国では耐用年数を迎える大量の太陽光発電モジュールの除却が開始される。その量は2030年までに150万トン前後に達し、2060年までの除却量は毎年30%づつ増加すると見込まれている。そこで除却されるモジュールの回収と適切な処分方法の確立が必要となるのである。これができて初めて太陽光発電のクロズド・ループグリーンチェーンを完結することができ、将来にわたって太陽光発電が健全な産業として持続的に発展できる必要条件である。

除却されるモジュールの組成は、多種の高価な金属を含むため、資源として回収しこれを有効活用することで循環というループが可能となる。太陽光発電モジュールを例にとると、ガラス、アルミと半導体材料が占める重量比は92%に達し、また、1%程度の銀などの貴金属を含む。これらの有価物を全量回収できれば、2030年までに、除却した太陽光発電モジュールから145万トンの炭素鋼、110万トンのガラス、54万トンのプラスチック、26万トンのアルミ、17万トンの銅、5万トンのシリコン、550トンの銀を回収することができる。メンブレン太陽光発電モジュールに含まれるテルル、インジウム、ジルコニウムなどの希少金属は主に輸入に依存している。そのため、効率的に回収し再利用すると巨大な経済効果を得ることができる。これらの資源の輸入量を減らすことは、原材料の供給リスクを軽減し、安定した資源を確保するという重要な戦略上の目的がある。

1.「除却」太陽光発電モジュールのリサイクルはすでに国の各部門が重要性を認識している:

太陽光発電モジュールと風力タービンブレードなどのクリーンエネルギー産業からの廃棄物をどのように処理するか。そして効率的な回収とリサイクルは重要課題であることは各国の政府部門、リサイクル産業と学界の注目を集めている。

2022年2月9日、国務院弁公庁の国家発改委員会などは「都市環境インフラ建設に関する意見書」を発表した。この中で廃棄物の処理施設を今後工業団地などに整備していくことが盛り込まれている。回収再生システムを効果的に運用するには、鉄、有色金属、自動車、太陽光発電モジュールと風力タービンブレード、電器、電池、タイヤ、木製品、紡績品、プラスチック、紙、ガラスなど廃棄物を100種類程度に分類することが計画されている。

2022年2月10日、工信部などの8部門は共同で「工業資源の総合利用を加速させるための実施計画書」を配布した。この中で廃棄物のリサイクル技術の研究開発の計画が謳われている。

2022年1月4日、工信部などの5部門は「革新的スマート太陽光発電の開発計画(2021-2025)書」を配布した。除却される太陽光発電モジュールのリサイクルを研究・開発について触れている。

2021年7月1日、国家発展改革委員会は「第14次5年計画での循環経済発展計画」を配布した。

2021年12月14日、工信部、国家発展改革委員会、科学技術部、生態環境部の4部門が共同で「国家工業資源を総合利用するための先進的な適用技術設備目録(2021年版)」を編制した。このカタログは94項目の工業資源を総合利用するための先進的な技術と設備を選定している。回収された結晶シリコン太陽電池モジュールのを高圧研削することにより、クリーンなガラス、ストライプ状の溶接テープ、粒状バッテリー及びシートEVAやバックシートなどの高分子材料を得ることができる。一つの部材に混じる異種材料の分別には解体後の部材の粉砕を施すことでその後の選別を容易にした。この技術を具備した装備を利用することで、95%以上の材料回収、90%以上の材料リサイクル率を実現し、環境フレンドリーを実現した。

2021年3月18日、国家発展改革委員会などの10部委員会は共同で「第14次5年計画でのバルク固形廃棄物の利用に関するガイダンス」を発表した(内容は省略。)

2.技術革新を図り使用済太陽電池のリサイクルを進める:

中国再生技術連盟は産学共同の研究を動員して廃棄された炭素繊維の複合材・太陽電池モジュール・風力タービンブレードなどのリサイクル方法について積極的に取り組んでいくという。

また、常州瑞賽環境保護科学技術社は同社は、国家規格である「太陽電池モジュールの物理的回収法マニュアル」、団体規格である「太陽電池モジュールの回収ガイドライン」と、「太陽電池モジュールの回収とリサイクルに関する一般技術要項」の制定に参加した。更に、常州大学や南京航空航天大学などの研究機関と産学共同の研究のもと業界規格の制定に大きな役割を果たしている。

中国科学院電気工学研究所が主導した太陽電池モジュールの回収研究では、ラボレベルだが、物理的な方法で全体で91.2%、銀は91%、シリコンは95.1%、銅は95.2%であった。一方熱分解法では、全体で90.2%、銀は93.8%、シリコンは96.3%、銅は99%の結果を得た。将来を見据えながら今後普及する新型太陽電池も視野に入れて、新しい構造・材料・コンポーネントを対象とした回収方法を開発する。レーザースクライビングやワイヤーカットなどの解体技術と、ヘテロ接合セルから銀やインジウムなどを回収する技術について研究に注力している。

3.太陽電池モジュールのリサイクル・パイロットラインが稼働:

「国家電力投資集団黄河水力発電会社」(「黄河会社」)は中国における初のコンポーネントリサイクルのパイロットラインを完成した。このパイロットラインでは、ポリシリコン、シリコンウェーハ、セル、モジュール、ステント、太陽光発電所などに関する企画、設計、運営、メンテナンス、測定、評価、回収などが統合されたクローズドラインである。

「黄河会社」によれば、ゴミを宝に変えることを目標に、2017年から廃棄された太陽電池モジュールを解体して、中に含まれるシリコン、銀、銅、アルミなどの材料をリサイクルするために必要な技術開発に取り組んできた。この研究開発に青海省政府と国家電力投資集団から4千万元以上の研究助成金を受けてきた。

約5年間にわたる研究の結果、「物理的解体、熱切断、湿式分離」などの工程を経る必要物質の回収方法を確立した。その結果フレーム・接続箱・バックプレーンの除去からガラスの分離・ハンダテープの除去・シリコンの精製工程まで、リサイクルの量産化ができるプラントの立案に至った。

同時に、既存発電所に使用されている主要部品だけでなく、コンポーネントにも回収装置の国産化を実現した。2021年12月、中国初のモジュールリサイクル用パイロット・ラインに着工。同ラインは90%以上の総合リサイクル率と11万点の年間処理能力を持つ。

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